CURRICULUM2026明治学院共通科目ガイドブック各外国語紹介19国際舞台で使う芸術の言語ろん、こうしたいわゆる「フランス語圏」の地理的広がりには、英語やスペイン語などの場合と同様、政治や経済においてのみならず言語においても弱小国を支配しようとした植民地主義ないし帝国主義という歴史的背景があることを忘れてはなりませんが。 これに加えて、フランス語は、かつてはヨーロッパにおける外交語として通用していたという歴史を持ち、現在でも国際連合などの国際機関の公用語の一つとなっているということを指摘しておかなければなりません。みなさんにも馴染みの深い例を挙げるなら、オリンピック競技大会。近代オリンピックを創設したのはフランスのクーベルタン男爵であり、オリンピック大会でのアナウンスがまずフランス語から始まることをご存じの方も多いでしょう。将来、国境を越えた活躍を目指す人にとって、フランス語を習得することは一つの戦略として有効であろうと思います。 このようにフランス語は、古くからいろいろな場所で使われてきたし、今もなお使われています。フランスでフランス語を使う。フランス語圏でフランス語を使う。国際舞台でフランス語を使う。要するに、フランス語は実際に「使える」言語なのです! でもここで、次のような疑問が浮かぶかもしれません。確かにフランス語はコミュニケーションの道具として役に立ちそうだけど、もしそれだけだとしたら、とりあえずは英語だけでよいのではないのか、と。グローバル化が進む現在、もう一つ別の言語を学ぶ時間があったら英語力を磨くべきだ、といった種類の議論が、実際、いろんなところでなされています。 でも、思い出してください。最初に述べたとおり、他ならぬ私たちフランス語教師自身が、何よりもまず、フランス語を楽しんでいるということを!道具として利用可能であるかどうかということ以前に、フランス語は学んで楽しい言語です。その理由はたくさんありますが、 ここではとくに、フランス語が芸術、ファッション、食文化など、私たちに喜びを与えてくれるさまざまな文化的事象に強く結びついているという点についてご紹介したいと思います。 まず、言語芸術としての文学について。『サンドリヨン(シンデレラ)』や『美女と野獣』、ボードレールの『悪の華』、メリメの『カルメン』、ユゴーの『レ・ミゼラブル』、カミュの『異邦人』、サン=テグジュペリの『星の王子さま』など、フランス語で書かれた詩、戯曲、小説を、みなさんもすでにいくつかご存じではないかと思います。また、2008年にノーベル文学賞を受賞したル・クレジオや同賞を2014年に受賞したパトリック・モディアノ、2022年に受賞したアニー・エルノーといったフランス人作家の名前を聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。翻訳ではなく原書で読むことができたら、いっそうフランス文学の世界に引フランス語は楽しい!— 芸術、ファッション、食文化、etc.
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