各外国語紹介 42ウウララルル山山脈脈 カカフフカカスス((ココーーカカササスス))山山脈脈 はロシアの一部、 1 つの「地域」とみなされていました。もっともこれはロシアの視点からの話で、ウクライナからすると、ずっとロシアに支配されていたということになるのかもしれません。ただしロシア帝国時代、ソ連時代のウクライナ人のロシアに対する見方がどのようなものであったかは、一概にこうと規定できるようなものではなかったと想像します。これについては別の機会に譲りたいと思います。今書いたとおり、ロシア帝国時代、ソ連時代を通して、ロシアにとってウクライナは「国」ではなく、ロシア帝国やソ連という「国」の中の 1 つの「地域」だったわけです。いて、「ウラルで」や「カフカスで」というときに、ロシア語では前置詞がinではなくてonが使われます。on Ural, on Kavkaz (Caucasus)です。そして以前はこの 2 つの「地域」と並んでウクライナが、onを使う「地域」でした。実際に私は大学 1 年生のときon Ural, on Kavkaz, on Ukraineと教わりました。 これで最初に挙げたin Ukraineとon Ukraineの理由がわかったでしょうか。つまりin Ukraineとはウクライナが「国」であることを認めた表現であり、一方、on Ukraineはウクライナが「地域」に過ぎないことを前提とした表現です。in Ukraineは新しい言い方で、on Ukraineは昔からある言い方です。1991年にウクライナが独立して「国」になって30年以上経つのに、ロシアでon Ukraineが使われ続けているのは、百年単位でon Ukraineが使われているため、それが習慣化していて、in Ukraineにならないのだと私は思っていました(みなさんの両親がテレビの操作で「チャンネルを回す」と言ったり、「看護師」のことを「看護婦さん」と言ったりするのと同じようなものです)。ただ私の観察している範囲で、マスコミでの用法を見てみると、国営放送や政権に近い新聞やネットメディアではon Ukraineが使われ、一方、ロシアで活動することが許されず、外国に拠点を置いている反政権のメディアではin Ukraineが使われています。つまり政権はウクライナを「国」ではなく、ロシアの「地域」であると意識的また無意識的にみなしているように思われます。もしかすると、ロシア人の意識の中にはウクライナは「国」ではなく、ロシアの一「地域」に過ぎず、今行われていることも、国と国の戦争ではなく、ロシア国内の内戦であるという意識があるのかもしれません。ロシアが侵攻しているウクライナ東部や南部は、ロシア語を母語とする人々が多数住んでいます。場所によってはロシア語の方がウクライナ語よりも多数派であったりします。ロシアがそのような場所に侵攻していることを私は理解できなかったのですが、ロシアがウクライナをロシアの一「地域」であるとみなしているとすると、今の状況はロシアが自分の意に沿わない「地域」を力ずくで従わせ ところでロシアにはウラルとカフカス(コーカサス)という 2 つの山脈があります。ウラル山脈はヨーロッパ・ロシアとシベリアの境となっている山脈で、この山脈よりも西がヨーロッパ・ロシアで、東がシベリアです。一方、カフカス山脈は黒海とカスピ海の間を東西に走っている山脈で、この山脈の北側がロシアで、南側にジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンという旧ソ連の 3 つの国があります。このウラル山脈地域とカフカス山脈地域を念頭に置
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