選択科目の紹介64●科目のあらまし●授業のゴール 日本の高校までの一般的な作文教育と、大学で求められる「書く技法」の決定的な違いとは何でしょうか。自分の体験による「素直」な感想をのべ、「○○すべきです」と主観的に言い立ててほめられることは、大学ではありえません。必要なのは、客観的な根拠にもとづいて「だれが考えてもこうならざるを得ない」と主張する、論理的な文章です。そのためには、他者の主張を批判的に検証する「読む技法」を身につけることも欠かせません。レポートや論文に求められる学問的な「読み書きの技法」、すなわちアカデミックリテラシーを早期に修得し、能動的な知の世界の入口をくぐりましょう。身につけた技法は大学生活のみならず、広く社会生活を根幹で支える力となるはずです。 「アカデミック・ライティング演習 1 」は、大学での日本語によるレポートや論文の執筆に必要な基本的技術を身につけるための、一学期完結( 2 単位)の少人数・演習型コースです。この授業の特色は、論理的な文章を書くさいに必要な具体的スキルを体験的に学べることです。指導の中心は、ほぼ毎週宿題に出されるレポートの執筆と、添削をふくむ教員からのフィードバックです。 こうしたスキルを学ぶことにより、レポートがかなりラクに書けるようになり、大学の講義の理解も格段に深まるでしょう。しかしそれだけではありません。論文執筆で体験する思考のプロセスは、見つけにくい問題の発見に役だち、まちがった推論を取りのぞき、あなたの主張を説得力あるものにします。とは言えスポーツや芸術の修練と同じように、書き方を学ぶうえでも、基本的な“型”すら身につけず、いきなり自分のやりたいようにやるのは理にかないません。この授業では、全クラス共通の配付資料にもとづき、履修者のすべてが同じ課題にとりくみ、基本的な“型”に即したレポートを書きます(2025年度は「選択的夫婦別姓制度」をテーマとしました)。自分なりのテーマを書きたいように書くのは、その先のことです。 この科目の履修者はほぼ例外なく、苦労の大きな授業であると感じるはずです。しかし、ひとに読ませるに値する文章を書き続ける意志さえあれば、履修者一人ひとりが別次元の書き手に成長できるよう、独自の教科書を用い、定員15名ほどのクラスで、明快かつ丁寧な指導をします。 学問的な文章を書くうえでもっとも重要なのは、はっきりした問いを立てたうえで、“論拠”を示しながらその答えを出すことです。この問い、論拠、答えの三点セットの有無が論文とただの随想や読書ノートとの決定的な違いです。 とくに重視する基礎的なスキルはつぎの 4 つです。「情緒作文」を捨て、論理的な説得の世界へアカデミックリテラシー
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