Curriculum 2026 明治学院共通科目ガイドブック
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6キリスト教の基礎の履修について(A)聖 書(B)歴 史 大学は高度に知的な場です。しかし、そこで生み出されるこの世の知識、情報、知恵を相対化できなければ、わたしたちは、自分たちが本当に歩むべき道を見いだすことはできません。しばしば、人は外から呼びかけられて、はじめてわれに返るという経験をします。外からの呼びかけに耳を傾ける契機があるかないかは、大学のような高度に知的な場にとってはきわめて重要なのです。キリスト教はわたしたちにとって、そのような外からの呼びかけと言えるでしょう。 今後大学でどのような学問分野を専攻するにせよ、わたしたちは、まず「キリスト教の基礎A・B」を通して、みなさんにこのような外から自分を相対化するための視点、社会や国家やこの世的で完結するものの見方を超えた、垂直的な視点の重要性を学んでほしいと願っています。これがこの科目を本学が必修としている三つ目の理由です。 キリスト教の世界は非常に幅が広く、多様な内容を持っています。「キリスト教の基礎」は、毎年35〜40ぐらいのクラスが開講されますが、担当教員は、それぞれ自分の専門分野(旧約聖書学、新約聖書学、教父学、教義学、教会史、キリスト教史、キリスト教倫理、キリスト教福祉、等々)を生かしながら、一年間の講義計画を立てています。各授業の具体的な内容は、シラバスで確かめてください。ここでは手始めにキリスト教を聖書、歴史、思想の三つの観点から簡単に説明しておきましょう。 聖書はキリスト教信仰の土台であり、世界を変えた「書物の中の書物」(The Book of Books)であると言われます。世界には約7,000の言語があるといわれていますが、今日聖書は部分訳も含めるとそのうちの3,300もの言語に翻訳されています。 キリスト教が成立した背景には、それ以前の千数百年に亘るイスラエル民族の歴史が存在しました。旧約聖書は、そのイスラエル民族の歴史と信仰の闘いの記録であり、「創世記」から「マラキ書」まで、全39巻の書物から成っています。それらを研究するのが旧約聖書学です。それに対して、27巻から成る新約聖書には、イエス・キリストの生涯を記した福音書と、最初期のキリスト教徒たちの行動の記録、手紙、そして「黙示録」が収められています。これらを扱うのが新約聖書学です。 聖書を重点的に扱うクラスでは、実際に聖書を読み、表現の特質を押さえながら、旧約聖書の世界・新約聖書の世界に直接わけ入って、そこから、旧約時代の人々の歴史と信仰、イエスと新約時代の人々の信仰について、すなわち、キリスト教信仰の基本中の基本について、理解と考察を深めてゆきます。 キリスト教は歴史的な宗教であるといわれます。新約聖書以後のキリスト教の歴史は、パレスチナの片田舎から、地中海を取り囲む古代ローマ帝国全体に広がり、中世には西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、ロシアへと引き継がれ、16世紀の宗教改革と対抗改革を経て、西欧列国による植民地化政策とともに、中南米、アフリカ、アジアへと世界中に拡大してゆきました。キリスト教は西洋の宗教という先入観が日本では強3 .「キリスト教の基礎A・B」について

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