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13  Can you remember this quote?  Can I quote you? その結果、調査の対象となった10語、計20文のうち約20%のケースで、異なる品詞の知識を積極的に活用した、すなわちフレマの前提が満たされていることが示唆された。一方で、同じく約20%のケースで、ある品詞では語意を正しく解釈できているにも関わらず同一の形が異なる品詞で使用された場合に意味解釈が成立せず、フレマの前提が満たされていないことが示された。後者の要因として、インタビュー調査では学習者と単語の性質の双方に要因があることが見えてきた。 例えば名詞として知っている単語(quote=引用)を動詞として認識する(quote=引用する)ためには、学習者はまずその語形を認識し、文の中での使われ方が自分が知っている品詞とは異なることを認識し、どの品詞として使われているのかを理解し、意味に思いを巡らせることが必要である。比較的文法能力の限られた学習者にとっては、文の中である単語がどの品詞として使用されているかを正しく認識することができず、その結果として品詞情報を無視して、自分が知っている訳語をつなぎ合わせてつじつまの合う意味を合成してしまうことがある。 また、品詞の特定までは問題なく進めたとしても、同じ語形が複数の品詞をまたいで使用されている時、quote(引用/引用する)のようにその意味の変化がとても分かりやすいものから、variable(変化し得る/変数)のように個別に学習する機会がなければ、推測だけで正しい意味にたどり着くことが難しいものもある。改めて複数の品詞にまたがって使用される語を集めて眺めてみると、品詞間での意味の対応関係が一様ではないことに気づかされる。 先に述べた通り、フレマはワードファミリーに比べると、学習者が持っていると想定する知識や能力が限定的で、ワードファミリーよりは学習者の目線に立った語の数え方と言える。しかしながら、学習者および単語の性質双方の要因によって、フレマでさえもその想定が満たされないケースがあることが分かった。母語話者や上級の英語使用者は、品詞をまたいだ意味の変換をいとも簡単にかつ自然に行ってしまうため、そこに学習者にとって様々なつまづきの要因が存在するということを忘れがちである。 一方、フレマの前提を成り立たせるような品詞感覚、文法能力、および意味推測における柔軟性が、英語学習上とても重要なものであることも間違いない。単に「フレマでは学習者の語彙能力を過剰評価してしまう恐れがある」と結論づけるのではなく、フレマの前提を少しでも満たせるような学習者を育てていくこともまた重要であり、それは本学においては「英語コミュニケーション」等の英語科目の今後の課題であると言える。

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