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17図2 四川方言のステッカーとトランプ図3 四川方言絵はがき(一部)(3)方言グッズの地域的偏在を生み出す要因 こうした中国語方言グッズは中国各地で一様に存在するのではなく、地域的な偏在が見られる。筆者がこれまでに収集した43種類の中国語方言トランプで言えば、中国東南部に分布する南方方言に属するものは2種類のみで、残り41種類はすべて中国北部および西南部に分布する北方方言のものであった。こうした地域的な偏在を生み出す要因は、1つには中国語の方言のあり方と密接な関わりがあると考えられる。 詹伯慧(1981=樋口訳1983:118)は北方方言内部の均一性の高さについて、以下のように説明する。と発音する。方言絵はがきでは、この[so]を標準語の発音に基づいて「嗦」と表記している。標準語の「嗦」(厳密には2音節語の「啰嗦」)は「くどくど言う」という意味があるため、「全世界で四川方言をくどくど言う」といった本来とは異なるニュアンスに変わる。方言音を再現するだけでなく、漢字が表語文字であるという特性を生かすことで、いわゆる「当て字」(仮借)の要領から面白さを意図的に創り出しているのだ。北京話を代表とする北方方言は、その内部の一致性がかなり大きい。東北三省(遼寧、吉林、黒竜江)から西南三省(四川、雲南、貴州)まで、直線距離にして数千キロに及ぶが、使用される言語は、同じ北方方言の系統に属しているので、漢人同士のコミュニケーションにはなんら困難がない。(後略) 現代標準中国語は北方方言を基礎方言としているため、標準語が理解できれば同系統にある北方

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