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19コンスタンティネスク・チェザル月例研究報告1年生からの自己決定型学習を奨励する:ドイツ語の授業における電子ポートフォリオの活用について(1)研究プロジェクトの概要 日本の大学における初習言語の授業は大抵の場合、春・秋学期にそれぞれ15コマないしは14コマと授業時間が限られている。このような事情のもとで、授業の内容を進行状況に柔軟に対応させ、またウエッブサイトや動画などのネット上の資料を簡単に授業に取り入れることができる方法を模索した。さらに電子ポートフォリオを利用し、学生が各自の学習記録をつけることによって、彼らが授業時間外に自由に取り組んだ学習を教員が把握することを可能にした。学生にとって新しい学習方法だが、オンラインの資料やポートフォリオを使った学び方について履修者を個別にインタビューし、質的調査によって分析した。(2)モジュール型オンライン教科書の開発 2021年度には初級のドイツ語クラスにおいて、出版された教科書を一切使わず、実験的に独自に作成した教材やインターネットで自由かつ無料で入手可能な資料を使用し授業を実施した。その際、MoodleとPadletという二つのプラットフォームを用いて、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA1レベル相当の内容を扱うドイツ語授業用のオンライン教科書の開発を試みた。トピックや授業の進行に関しては、ドイツ語圏で出版されている教科書を参考にしたが、学習内容を1学期15コマの授業に合わせることで、日本の授業形態に対して適切なフォーマットで提示することを目指した。このコンセプトを授業内容と学習目的の点で同じ3つの授業で応用した。さらに、2022年度は引き続き2つの授業で使用し、秋学期から授業形式がオンラインから対面に切り替わった際にも電子教材の利用を続けた。 2021年度には、ネット上のウエッブサイトや動画、授業中の課題や宿題、文法や語彙に関するヒント、そして自分で制作した「ミニ講座」の動画などのコンテンツを毎週適宜追加し、それらの資料で構成されるオンライン教科書を徐々に完成させていった。こうしたプロセスのゆえに、また教育上の理念からも、出来上がった教科書は従来の出版された教科書と比べると不完全とみなされうるものであった、というのも文法や語彙の練習問題、単語リスト、文法の解説が含まれていないからである。学習者自身に未完成の部分を他の情報源から補完してもらう必要があるが、それによってオンラインの辞典やその他の参考資料を適切に活用し、自分の力で継続的にドイツ語の学習が出来るようになることがそこに期待されている。 授業目標は主に、Goethe-Zertifikat A1:Start Deutsch 1という初級レベルの口頭試験で出される自己紹介の問題に基づき、「名前、年齢、出身地、職業や勉強、住んでいる場所、話せる言語、趣味」といったテーマに関する短いやり取りができるようになることである。また、そのやり取りにおいて相手が言うことを理解し、自分のことを伝え、そして相手に情報をたずねることも望まれる。学生がそのやり取りに必要な文法や語彙を身に付けるため、授業の内容に合った動画やウエッブサイトを探し、適切な課題を考案した。ネット上でアクセスできる資料なので、その情報源への

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