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21(4)教員としての振り返りと今後の課題 考案した教授コンセプトを2年間に渡って調整しながら使用してきた。私が授業に相応しいと考える資料をその都度教材にして、必要に応じて授業内容をクラスのニーズに合わせて容易に修正することができた。それによって学生にも「面白い」や「楽しい」といった評価をされる授業にすることに成功したと考える。市販の教科書に頼らず学生に無料の教材を提供できることにも満足している。今日、インターネット上には学習に活用することができる資料が無数にあり、その中で教員がそれをより適切に利用し、いかにして効果的に勉強できるかを学生に示すことに価値が見出される。それこそがまさにオンライン教科書の目的である。また、アクセスすることができる資料が豊富にあることを考慮すれば、授業時間外に興味のある内容に取り組むことのできる自主性を学生に認める必要がある。教員はそうした自由な学習の内容ではなく、学生が責任を持って自分なりに勉強することができたということ自体を評価することが望ましい。それがポートフォリオの役割である。学生に与える自由と教員からの指導のバランスに関しては今後も考慮すべき課題の一つである。 今までは学期に一度、各学生と学習全体やポートフォリオの利用について話し合う「ポートフォリオ面談」の時間を設けていた。一人あたり15分という短い時間ではあるが、ドイツ語を学ぶモチベーションや学習に関して不安な点、そして授業への期待を確認することができた。その話し合いから得た情報は授業内容とポートフォリオの調整に活用され、貴重な時間となった。特に、新しいコンセプトを実践する際には学習者との対話が不可欠であり、そのためこれからも学生と話し合いをしながらより適切な教材や教授法を探り続ける。も対面でも不公平の生じない評価方法を考え、結果としてポートフォリオという形式を選んだ。授業で気になった内容、予習・復習の内容やその他自発的な学習の成果を学生に毎週ポートフォリオに記載してもらった。また、オンラインのポートフォリオであるため、学生による更新が行われると教員がすぐにその内容を確認できるので、課題に関するコメントなどを追加でき、学生と教員の間のコミュニケーションツールとして活用することもできる。毎週数十人のポートフォリオを確認する余裕がなかったとしても、定期的に確認して、学生から相談がある場合もすぐに学習内容を確認できるのは大きな利点である。 ただし、文章や口頭で指導したにもかかわらず、ポートフォリオの書き方で悩む学生もみられた。それでも秋学期になると多くの履修者は自分なりのポートフォリオの使い方に「たどり着いた」と確認することができた。どのようなことをポートフォリオに追加するか、自己学習に関してとりわけ何に注力するかによってそれぞれの学び方が明確になってくる。さらに、私からの提案を受けて、ポートフォリオに他のドイツ語の授業で学んだことや取り組んだ課題と自己学習を記録する学生も数名みられた。学生にとってただ一つの授業のためではなく、ドイツ語の学習全体を記録するためのツールにすることができたのは期待以上の結果だった。

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