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42プロジェクトメンバー:池田昭光プロジェクト報告中東・北アフリカ諸国の高等教育に関する研究動向の調査 本研究プロジェクトは、高等教育が拡大するとともに、新自由主義的風潮のもとで高等教育が変化を余儀なくされている世界的な動向が中東・北アフリカ地域に及ぼす影響を検討するものである。この地域における教育関連のテーマは、特にイスラーム教育(宗教教育)を中心に注目を集めてきた。それに対して本研究プロジェクトは、直接的には宗教にかかわらない領域を対象とし、むしろグローバル化や新自由主義など、地球規模で現代に展開する教育現象に着目する点で、新しい研究領域の開拓を目指す。 2022年度は、まずは関連する先行研究を中東地域研究、高等教育の文化人類学的研究、教育社会学、高等教育論などに求め、文献調査をおこなった。その結果、(1)中東・北アフリカ地域では、ペルシア湾岸諸国における事例研究の蓄積がなされつつあること、(2)グローバルな潮流としての高等教育改革の影響が、ペルシア湾岸諸国で先鋭に現れていること、(3)筆者の専攻する文化人類学においても、高等教育や大学改革について注目がなされつつあり、人・モノ・カネの流れをめぐるグローバルな動きがローカルなレベルでどのように地域や人間をかたちづくるかの観点で興味をもたれていること、などがわかってきた。 そのため、本プロジェクトにおいてもこうした動向をふまえ、まずはカタールやアラブ首長国連邦(特にドバイやアブダビ)を中心に、ペルシア湾岸諸国をテーマにした文化人類学的ないしはフィールドワークにもとづく研究の事例紹介とその意義を整理し、調査報告として発表した。グローバルに展開する高等教育が、一種の権力として高等教育に関係する人びとをつくりだし、あるいはつくりかえる側面が伝われば幸いである。(2022年度刊行物)池田昭光「中東・北アフリカにおける高等教育の文化人類学的研究──予備的考察としての研究例紹介」『カルチュール』17巻1号、2023(予定)

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