研究所概要報告8月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告公開講座研究プロジェクト報告研究業績The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts金珍娥(きむじな)1.目的 本稿は、言語研究を言語教育研究へと適用し、教材として具現化する実践について述べるものである。言語文化論、談話論、文体論、文法論、語彙論といった韓国語に関する言語研究の成果を、言語教育における教材論へと適用、とりわけ大学における韓国語の中上級教材へと具現化した。教材はA4判200頁の形態、書名は『マキのソウル物語』(金珍娥・野間秀樹著 明治学院大学韓国語研究室)である。金珍娥(2002-2019d)の21本の論考と書物の研究成果に立脚するものである。2.なぜ中上級教材開発か──韓国語中上級教材開発の必要性 日本で出版されている韓国語教材は、初級レベルの教材は豊富に存在するのに対し,中上級教材は出版物の種類が非常に少ない。出版されている教材も中上級に見合う高度な語彙・文法・表現の説明がなされていないものが目立つ。そういう状況もあり、大学などの中上級レベルの学習のためには、韓国語で出版された韓国の教材や韓国の大学所属の韓国語教育機関である、いわゆる〈語学堂〉が出版している教材を使用することが多い。しかし、韓国で出版される教材は、当然のことながら、韓国語を韓国語だけで説明しており、日本語話者を対象に特化しているわけではなく、日本語と対照することによって際だって現れる文法や表現の問題に焦点が当てられていない。日本語母語話者の中上級レベルの学習者が要求する、語彙・文法・表現における日本語との相違を適切に説明できないのである。近年日本での韓国語学習者数の増加に伴い、韓国語中上級教材開発が急がれる所以である。3.韓国語中上級教材開発の実践 3.1.基本理念:教材研究の観点 今まで明治学院大学の韓国語教材では、『はばたけ!韓国語 ライト版1』、『はばたけ!韓国語 ライト版 2』、『はばたけ!韓国語2初中級編』、『Viva! 中級韓国語』、『ドラマティック・ハングル──君,風の中に──』、『韓国語学習講座「凛」1入門』を初中級のレベルで用いている。これらの教材には、①〈人はいかに話しているのか〉、そしてそれは②〈日本語と韓国語はどう異なるのか〉という大きな2つの観点が貫いている。 中上級教材もこの2つの観点を引き続き中心に据え、この2点が鮮明に現れるよう研究し、開発に努めた。3.2.新たなる中上級教材開発の力点 韓国語に関する言語研究の成果を、言語教育における教材論へと適用していく。なお、既存の教材では頭の中で「会話」を造ることで、現実の言語使用からかけ離れた教科書の例文と化すことが多い。本教材研究では、徹底して実際の韓国語会話の談話データに基づいた内容で構成した。とり月例研究報告言語研究から言語教育へ:韓国語中上級教材への具現化
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