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研究所概要報告月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告公開講座研究プロジェクト報告研究業績19The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts徐正敏目次 はじめに時代状況「東京宣言文」 の作成主体「東京宣言文」 の作成経緯国内外の配布と海外への宣言、日本キリスト教界とアジア、欧米教会の支援「東京宣言文」の内容分析結論 1972年10月、韓国の朴正煕軍事政権はいわゆる「10月維新」を断行した。これは超憲法的処置で、事実上朴正煕の永久執権を画策する反民主的政変だった。1961年の朴正煕一派の5.16軍事クーデター以後、特に朴正煕の大統領三選出馬のための強圧的「三選改憲」以降、韓国民主化運動に邁進していた運動勢力は、大きな衝撃と挫折を経験したが、さらに強力な意志をもって民主化運動の隊列を整え、闘争の方法と路線を再構築してゆかなければならない状況におかれた。 当時の韓国民主化運動勢力の主軸としては、プロテスタント・キリスト教の少数リベラル派勢力とカトリック勢力が協力するキリスト教リーダーシップが重要な役割を担っていた。特に「韓国キリスト教教会協議会」(以下、NCCK)を中心とするキリスト教エキュメニカル共同体は様々な方面で民主化闘争を企画し、また民主勢力に対する政府弾圧で投獄や拷問されるなど人権を侵害される人々に対する支援、救助活動に尽力した。 キリスト教の社会参加・闘争は、あくまでその神学的、信仰告白的基礎を示さなければ、その行動の根拠を正しく確保できない。それは対外的説得力の確保、すなわち世界教会との協力と連帯を実現する上できわめて重要なことであった。 ここにおいて、在東京の韓国キリスト教民主化運動の主導者たちは、国内教会とりわけNCCKの中心勢力と連携し、韓国キリスト教民主化運動史における最初の神学的宣言であり信仰告白である「1973年韓国キリスト者宣言」(以下「東京宣言文」)を作成するに至る。そしてそれは1973年5月20日付で秘密裡に韓国で流布され、その後世界に発表された。 本論文では、神学史的にも意義深い「東京宣言文」の作成経緯とその内容分析をおこなうこととする。特に作成経緯については当時東京に滞在し、実際にこの仕事を推進した三人、すなわち宣言の韓国語版と日本語版を作成した池明観 、英語版を作成した金容福(最終的な英文校閲は夫人であるアメリカ人Marion Kimが担当した)、そして全体的なプロセスを主導し、国内組織との連絡、世界教会への通報、送告までを手配した呉在植の活動を中心に描出してみたい。月例研究報告東京発「1973年韓国キリスト者宣言」の経緯と内容─池明観、呉在植、金容福の活動を中心に─

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