研究所概要報告月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告公開講座研究プロジェクト報告研究業績24The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts野副朋子スーパー、市場の視察 ʻ30 by 30ʼではシンガポールの食糧自給率30%のうち、20%は野菜や果実、10%は魚や肉などのタンパク質源で達成することを目指している3)。そこでまずスーパーや市場で販売されている野菜や果実の種類や価格について視察した(図1A-C)。シンガポールは多民族国家であり、中華系、マレー系、インド系のほか、外国人も多数暮らしている。スーパーでは、日本と同様に多種多様な野菜や果実が販売されていた。青梗菜1.7シンガポールドル(SGD)、玉ねぎ1.97 SGD、ニンニク3.1 SGD、空心菜1.75 SGD、リンゴ4.5 SGDで販売されていた。当時の日本円レート1 SGD=約103円で換算すると、青梗菜は175円、玉ねぎは203円、ニンニク319円、空心菜180円、リンゴ 463円であり、日本と同程度の価格であった。また中華系とインド系の市場も視察した。市場では、野菜や果実での値札がなく、価格は不明であった。販売されている野菜は、中華系とインド系では異なる種類が販売されており、中華系市場では葉物野菜が、インド系では果実系野菜が多かった。植物工場の視察 Kok Fah Technology Farm 在シンガポール2世のWong Cheo氏が1979年に開始した家族農園事業を前身として、1999年に設立された。同年から同社はシンガポール最大のスーパーチェーンに野菜の提供を行ってきた。現在は従来通りの土の農園に加えて、植物工場も行っており、新しい技術の導入も積極的に行っているとのことだった(図1D-F)。見学の際にイントロダクションを行ってくださった方はマレー系の見かけをされており、普段は小学校で教えているとのことだった。植物工場の案内だけでなく、現地でよく食べられている料理を振舞ってくださった。植物工場でメインに栽培されていたのは青 現在、世界の人口は約80億人で、今後増加していくと予想されている。増加する人口を賄う食糧を生産できるよう準備する必要がある。一方、気候変動により発生する熱波や干ばつが食糧生産に負の影響を与えることが予想されている。気候変動下において、いかにして必要な食糧を生産するのか考える必要がある。その解決のヒントは「緑の革命」に見ることができる。「緑の革命」とは1940年代から1960年代に穀物生産が大幅に高められた農業技術革新のことである。近い将来の食糧増産を達成するためには、前世紀の「緑の革命」のような技術革新を農業生産に起こす必要がある1)。 シンガポールは2019年3月に、栄養ベースでの食糧自給率を現在の10%未満から2030年までに30%へ引き上げる方針ʼ30 by 30ʼを政権が打ち出した2)。シンガポールは国土面積が狭く、農地も限られている。そこで垂直農法などの高度な技術を導入した植物工場や養殖技術の開発に国を挙げて取り組み、迅速な実用化を行うことで、ʼ30 by 30ʼの達成を目指している。シンガポールに2023年2月12日−25日の期間に滞在して視察を行ったので報告した。月例研究報告次の緑の革命を目指して〜食糧自給率引き上げを目指す、都市国家シンガポールの視察
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