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研究所概要報告月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告公開講座研究プロジェクト報告研究業績25The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts梗菜や空心菜であった。日本では青梗菜は毎日の食卓に上るというわけではないが、シンガポールの中でも特に中華系の方は青梗菜や空心菜を日常的に食べるため需要が大きいとのことだった。また、政府の方針に従い、食糧自給率を上げる必要があることから、5年後には当該農園は高層ビルになっているだろうとのことだった。 Little Farm Explorer 都心の住宅街にある植物工場で、ʼ30 by 30ʼが掲げられてから設立されたようであった。垂直農法やアクアポニクス、植物工場でのキノコ栽培など新農業技術を積極的に取り入れていた(図1G-I)。また、土耕栽培のビニールハウスも設置されており、土を肥沃にする虫を飼育して、たい肥作成や養鶏など、循環型農業を構築しようと試みていた。まだ試験段階であり、主に子供向けに都市型農業を普及させる活動にも力を入れているとのことだった。ʼ30 by 30ʼでは農業従事者の育成にも力を入れる方針のため3)、教育にも力を入れていると考えられた。シンガポール国立大学の視察:浦野大輔博士 Temasek Life Science Laboratory (TLL)の浦野大輔博士を訪問してディスカッションを行った。TLLは2002年に設立された非営利団体で、シンガポール国立大学のキャンパス内に位置している。浦野博士は、ロボット工学、情報科学、バイオテクノロジーを駆使した農業技術革新により都市環境における食糧生産を行うことを目指して精力的な研究を展開されている4)。シンガポールにおける都市型農業開発は国をあげた事業であり、コンプライアンスが厳しい。実際、シンガポールの植物工場を視察するにあたり、事前にいくつかの植物工場にコンタクトをしたが、返信がなかったり、途中で返信が途絶えたりしたところが多かった。浦野博士は、公開された情報で最大限ディスカッションをしてくださった。植物工場に関連する技術は日本の方が高い状況にあるとのことだったが、植物分子生物学だけでなく他分野の方と連携されて確実なアウトプットを行いながら忙しく研究をマネージメントする様子が伺えた5)。まとめ シンガポールの政策は地域の植物工場従事者にも浸透しており、最先端の研究を現場に活かすための戦略と熱量があると感じられた。また、植物工場ですべての作物を生育させるのは難しく、地域に応じた作物の選抜が必要であるという新たな気付きをえることができた。さらに、一般市民への知識の普及活動においてもシンガポールの取り組みに学ぶべきところがあった。今後、本学においてもシンガポールの視察で得た気付きを生かして教育研究を行っていきたい。

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