研究所概要報告月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告公開講座研究プロジェクト報告研究業績49The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts【注】1)山田昭次「関東大震災・朝鮮人虐殺は『正当防衛』ではない 工藤美代子『関東大震災「朝鮮 以上のように、『真実』には史料の引用や解釈、批判などの極めて深刻な欠陥があり、その「暴動実在説」は実証に基づくものとは言い難い。自らの都合に合わせて史料を恣意的に引用・編集した結果、実際の内容とは真逆の主張の根拠として用いられている事例すらある。 かつてピエール・ヴィダル=ナケが指摘したように、対話の前提には「真理に対する共通の敬意」が存在していなければならない5)。だからこそ、この前提を欠いた歴史修正主義的主張を「学説」であるかのように認めることは、そうした対話の土台を破壊する行為になりかねない。しかも虐殺否定論者の唱える「暴動実在説」のように、被害者を加害者へと転化させる主張を後押しすることは、過去のみならず、現在を生きるマイノリティたちを窮地に追いやる結果をもたらすことにもなりかねない。『真実』を「実証的な論証をまったく欠いた非学問的な著作」(山田昭次)とする批判に真摯に耳を傾けるべきであろう6)。人虐殺」の真実』への批判」『世界』第809号、46頁。2)加藤直樹(2019)『トリック 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』ころから。3)同前書、97、101-102頁。4)John W. Doty, W. W. Johnston “Report on Earthquake and Fire Which Occurred in the Vicinity of Yokohama and Tokyo, September 1, 1923”, FO 908/6, イギリス国立公文書館所蔵. ドーティーについては拙稿「1923年9月3日の「体験」とは何であったか ドーティー/ジョンストン日記を読む」『人権と生活』第56号、在日本朝鮮人人権協会、2023年を参照。5)ピエール・ヴィダル=ナケ(石田靖夫訳)『記憶の暗殺者たち』人文書院、1995年、9-10頁。6)山田、前掲論文、49頁。
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