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研究所概要報告月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告公開講座研究プロジェクト報告研究業績75The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Artsプロジェクトメンバー:伊藤瑳良1 目的 フィギュアスケートは氷上でステップ、スピン、ジャンプなどの技を組み合わせながら楽曲に合わせて演技をするスポーツである。氷上で滑走スピードを保持調整しながら様々な技をこなすためにはいかなる体勢においても安定した滑走を可能とする滑走動作スキルが求められる。フリー・スケーティング演技における滑走中の移動速度と選手の競技力との関係性を検証した研究では、高得点を得ている選手ほど滑走速度が速いことが報告されている1)。このことは、フィギュアスケートのパフォーマンスに滑走速度が大きく影響することを示唆している。ところで、スピードスケート育成ハンドブックによるとスピードスケートでは、下肢による爆発的な脚の伸展動作によって推進力が得られるため、脚の伸展にかかわる筋力が重要であると報告されている2)。他にもスピードスケートのカーブ滑走スピードの持続に影響を及ぼす要因について検討した研究では、スピードスケートのカーブ滑走スピードを維持するためには、滑走局面を考慮した下肢を深く屈曲した姿勢での力発揮のトレーニングが重要となることを示唆している報告がある3)。競技は異なるものの、類縁性を考慮するとフィギュアスケートの滑走動作においても巧拙が生じる要因のひとつとして下肢の筋活動の違いが関与していると考えられる。 しかしながら、これまで行われてきたフィギュアスケートのバイオメカニクス的研究の多くはフィギュアスケートの上級者および中級者を対象にジャンプ動作を分析した研究が中心であり4)-7)、基礎的滑走動作における筋活動の実態や基礎的滑走技術の上達に必要な要因の解明については十分検討されていない。加えて、フィギュアスケートの指導現場では指導者の経験や知識に偏る指導が主流であり、数値や科学的根拠に基づいた指導指針が示されているとは必ずしも言えない。 そこで本研究では、フィギュアスケート上級者および初心者における滑走動作中の下肢の筋活動を比較検討し、筋活動の特性を明らかにすることでフィギュアスケートの指導に資する基礎的資料を得ることを目的とした。なお、今回はプレ実験として行ったフィギュアスケート上級者および初心者による基礎的滑走動作中の下肢の筋活動について、動作類似性の高いインラインスケートを用いて、比較検討した。2 方法2.1 被験者および実験タスク 被験者は健常成人女性2名(平均年齢30.5±0.5歳、身長156.5±0.8cm、体重47.5±0.4kg)で、1名はフィギュアスケート初心者、1名はフィギュアスケート歴28年の上級者であった。実験タスクはインラインスケートによるフォア スケーティング、キャリング、フォア スイズルおよびバック スイズルとした。キャリングは、両脚滑走でカーブを描く技である。カーブしたい方向に身体を傾けながらカーブに対して外側の足はインサイドに倒し、カーブに対して内側の足はアウトサイドに倒しながら滑走する基本技術である。スイズルは、両足を開閉させながら同時に足関節および研究プロジェクト報告フィギュアスケート初級者のためのスキル習得支援プログラムの開発〜フィギュアスケート上級者および初心者における滑走動作中の筋活動の比較〜

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