HTML5 Webook
27/86

研究所概要月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告研究プロジェクト報告研究業績23The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts【参考文献】『引照つき 新共同訳聖書』日本聖書協会、2005年『ギリシャ語 新約聖書釈義事典』教文館、1994年石牟礼道子『苦海浄土─神々の村』藤原書店、2006年宇井純編『技術と産業公害』東京大学出版会、1987年木野茂編『新版 環境と人間─公害に学ぶ』東京教学社、2001年原田正純『水俣が映す世界』日本評論社、1989年栗原彬編『証言 水俣病』岩波書店、2010年イヴァン・イリイチ、桜井直文監訳『生きる思想─反=教育/技術/生いのち』 藤原書店、1999年ユルゲン・モルトマン、沖野政弘・蓮見和男訳『いのちの御霊』新教出版社、1994年ユルゲン・モルトマン、蓮見幸恵訳『いのちの泉─聖霊といのちの神学』 新教出版社、1999年神田健次編『【講座】現代キリスト教倫理1』日本基督教団出版局、1999年拙論「民衆の霊性─水俣病事件と『恨の司祭』」(『基督教論集』第48号、2005年。所収論文)手伝いなどをさせてもらいました。胎児性患者とは、メチル水銀中毒の母親から胎盤を経由してメチル水銀が胎児に移行し、この世に生を受けた人たちです。当時水俣には数十人おられましたが、新潟では妊娠規制が敷かれたために胎児性患者は一人だけだと聞きました。水俣から学んだ教訓は、いのちの抹殺ではなく、多様な存在のいのちを大切にするからこそ同じ過ちを繰り返さないように努力し、すべてのいのちと共存していくことだったはずです。 2024年5月、環境大臣と水俣病被害者との懇談の際、患者の発言中にマイクの音声が切られる「マイクオフ事件」が起こりました。二度とこのような出来事を繰り返さぬよう、人と人、神と人、人間と自然の関係を回復するために、いまを生きる私たちに求められているのは、名状しがたい傷を負わされている患者さんたち、また、無念のうちにいのちを奪われた死者たちの魂の声に真摯に耳を傾けることではないでしょうか。 今後、水俣との出合を手がかりに、民衆のスピリチュアリティー、聖書の「人間」・「創造」理解、「いのち」の問題を、アジアとの関連において、実践的、社会倫理的、宣教論的課題の一つとして引き続き研鑽を積みたいと考えています。

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る