研究所概要月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告研究プロジェクト報告研究業績29The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts文吉英1. 研究背景及び研究目的 近年、日本の高等教育機関における韓国語学習者が急増している(朝鮮語教育学会, 2021)。大学における韓国語の授業では、一般に韓国人教員が日本人学生を対象とする場面が多いが、このように文化的背景の異なる学習者の教育に携わる上で、彼らの抱く当該言語の国に対するイメージを理解することは、学習者の個々の特質を理解するために欠かせないことである。本研究では、韓国語学習者が増えつつある日本の現状を踏まえ、大学における韓国語学習者の韓国イメージに着目する。 日本人大学生が韓国人をどのように捉えているかを検討した研究として呉(2013)が挙げられる。この研究は、日本人大学生は、韓国人に対して「熱くて強い気持ちの持ち主」といった複合的な認識を持っていると述べている。次に、呉(2018)は、韓国人との接触経験に着目し、大学の国際交流プログラムで7日間韓国を訪問した日本人学生を対象に訪韓前、帰国直後、帰国後5ヶ月の3回にわたって韓国人へのイメージに関する面接調査を行った。その結果、渡韓経験が韓国人の内面的な特徴に関する認識を生み出し、その影響がある程度持続可能であるとした。一方、日本人大学生のうち、韓国語学習者を対象とした研究もある。斎藤(2011)は、教養科目として韓国語を学ぶ学生の韓国、韓国人、韓国語に対するイメージを検討し、前期と後期の最後に調査を行うことで韓国語学習によるイメージ変化を分析した。その結果、前期の調査で、上記の3者に対して概ね好意的で肯定的なイメージを持っていること、後期の調査では、肯定的なイメージが増え、学習者が元々持っていた肯定的なイメージが強化されたことが明らかになり、韓国語学習の韓国、韓国人イメージへの良い影響を報告している。尹・南(2015)は、教養科目として韓国語を学ぶ学生と他言語を学ぶ学生の韓国イメージの比較検討を行った。その結果、韓国語学習者のほうが韓国に対するイメージの項目に偏りが少なく、多岐に渡っていることが明らかになった。近年、日本人大学生が派遣留学先として韓国を選択している(日本学生支援機構, 2012)現状を受け、交換留学生に注目とした岩井(2012)は、日本人交換留学生の留学事前、六ヶ月目、事後の時期による韓国イメージの変化を検討している。その結果、肯定的イメージは、事前が最も多く、六ヶ月目で減少するものの、事後には再び増加したとしている。また、否定的イメージは、事前から一定程度見られたが、六ヶ月目で最も多くなり、事後は減少したことから韓国人イメージが韓国人との接触経験により縦断的に変化し得ると述べている。 以上のように、日本人大学生の韓国や韓国人のイメージに関する様々な研究がなされてきているが、これらの研究にも課題は残されている。それは、上記の先行研究は、韓国語の学習経験のない学生もしくは教養科目として韓国語を学ぶ学生を対象としているが、専攻として韓国語を学ぶ学生の韓国イメージは管見の限り明らかにされていないという点である。そこで、本研究では、日本の大学において専攻として韓国語を学ぶ日本人大学生の韓国イメージがどのようなものかを明らかにし、その特徴について検討することを目的とする。月例研究報告日本人大学生の韓国イメージに関する研究─専攻として韓国語を学ぶ学生に注目して─
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