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研究所概要月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告研究プロジェクト報告研究業績33The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Artsが窺える。また、返信が早い、良い意味で周りの人に興味がない、新しい人、関心のある人以外には興味がない、友達におすすめしたい、留学を通して今まで以上に好きになったというイメージが挙げられる。このように、韓国人や韓国社会に対するイメージが多く、その内容が具体的である理由として次の要因が考えられる。〈表1〉からみると本対象者の場合、全体的に韓国への関心度が高く(4.2/5点)、様々な情報源を通じて韓国に関する情報を得ている。また、韓国旅行や留学を経験している者が11名(対象者1〜11)おり、このうち、2名を除き、韓国人の知り合いがおり、そのうち最も交流の多いのは友だちであると答えている。渡韓経験がない対象者の場合も6名は韓国人の知り合いがおり、調査時点で韓国人の知り合いとのコミュニケーションをしていると回答した。さらに、本対象者は、韓国語を専攻しているため、必須科目として韓国の文化や社会について学ぶ「韓国事情」のような授業も 受講していることも推測できる。これらのことから、上記の結果は、本対象者が普段韓国人の知人との関係や韓国での滞在を通して見たり、聞いたりした経験と、授業において学習した内容を基に韓国社会と韓国人について認識できた可能性が考えられる。 次に、肯定と否定のイメージ別に比較すると、肯定的イメージが半数以上(150例)であり、否定的イメージ(62例)より2.5倍以上多く見られた。岩井(2012)は、日本人交換留学生の場合、留学事前に韓国への肯定的イメージが最も多く、途中は減少するものの、留学後は再び増加すると報告している。一方、否定的イメージは、留学事前に最も低く、6ヶ月で増加し、事後に減少するとしている。これらについて岩井は、6ヶ月以降の韓国生活の慣れや帰国後は自国にいるという環境の影響のためであるとし、文化適応過程は「初期の適応」「危機」「適応の再獲得」というU字型カーブを描くというLysgaard(1955)のモデルと重なる結果であると述べている。本対象者の場合も全員留学前もしくは留学後の段階にいたと言える。つまり、滞在経験のある対象者は、文化適応過程を経て、留学前に多かった肯定的イメージが留学後再獲得され、否定的イメージは増加を経て減少していたのではないかと推察される。また、滞在経験のない対象者は、韓国留学を控えており、留学への期待により否定的イメージが少なく、肯定的イメージが多い状態であったのではないかと考えられる。他の要因としては、性別による韓国イメージへの認識が異なる点が挙げられる。呉(2018)は、韓国人に対する否定的な認識に影響を与える一因としてマスメディアの情報を挙げているが、女性は男性に比べて歴史問題や新聞報道などマスコミやSNSで流される情報に影響される度合いが低い(生越, 2019)。本対象者は2名を除いて女性であり、韓国の文化や芸能、生活や健康に関心を持っている対象者が多い。つまり、韓国に対して否定的に認識させるような情報にあまり興味がなく、ニュースなどのマスコミによる影響も少ないために否定的イメージより相対的に肯定的イメージが強く形成されたのではないかと考えられる。 最後に、本対象者の否定的イメージにおける特徴について言及したい。先行研究とは異なって、新たに見られた否定的イメージとして、日本と似ているようで似ていない、日本にはないがちょっとしたことで悪態つく、日本以上に生き急いでいる人が多い、日本より上下関係が厳しいなどが挙

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