HTML5 Webook
75/86

研究所概要月例研究報告ランゲージラウンジ活動報告語学検定講座報告研究プロジェクト報告研究業績71The Annual Report of the MGU Institute for Liberal Arts図1 「夯番薯」図2 「夯」らしさ」の象徴であり、そこから派生して「可愛らしさ」や「懐かしさ」も表す。そのため、クレーンゲームセンターの看板(図5)、スイーツや軽食の販売店の看板、お菓子やアイスのパッケージ、アニメのDVDのパッケージなどで目にすることができる。さらに、「子どもらしさ」の象徴を大人があえて使うことによって、ふざけたニュアンスを出すこともある。図6では「全饒河最ㄔㄡ■服飾」(饒河街夜市で最もダサい服)のように、「醜」(ダサい)の部分だけが注音字母でㄔㄡ■(ピンインではchǒuに相当)と表記されている。 ④意図的なローマ字表記。例えば、中国語で「ニワトリ」を意味する「鶏」(中国語音:jī)がローマ字のGで表記されていた(図7)。これは次の項目で挙げる言葉遊び的な要素に加え、飲食店ならではの需要として、速記の役割も兼ねているかもしれない。 ⑤掛詞による表記。つまり、同音字や類音字を連想させることで二重の意味を掛ける表現法が台湾では多用されている。図8の「好佳亭」(中国語音:hǎo jiā tíng)という店名は表面的に見れば「良い飲食店」の意味であるが、まったく同じ発音の「好家庭」(中国語音:hǎo jiātíng)の意味も兼ねており、家庭的で親しみやすいイメージが加わる。図8の「古亭讃食堂」の「讃」(中国語音:zàn)もまた、本来の「たたえる、ほめる」という意味の裏に「駅」を意味する「站」(中国語音:zhàn)が隠されている。これは、台湾華語ではそり舌音が前寄りで発音されて歯茎音のように聞こえることに加え、この飲食店が実際に地下鉄の古亭駅近くに位置することに由来している。図7に見える店名の「李賀」も、人名の「李賀」(中国語音:Lǐ Hè)から取っているだけでなく、「こんにちは」を意味する台湾語の「你好」(台湾語音:lí hó)の意味も掛かっている。 本プロジェクトを通じて得られたこれらの知見は、台湾華語の使用実態の解明だけでなく、中華圏全体の地方共通語研究への貢献、さらには本学における中国語教育にも還元することができるだろう。

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る